学校の先生になりたいと思っているけど、続けられなくなってしまったらどうしよう‥先生の仕事は大変だって聞くし‥。
1年目で退職っていう方もいるの?どんな理由で退職になってしまうのか知りたい。
学校教員を目指しているみなさま、こんなお悩みをお持ちではないですか?
実は、せっかく頑張って教職課程をこなし、就職活動や採用試験を受けても、1年目で教員を退職してしまう先生もいらっしゃるのです。
この記事では、私立学校での採用人事経験を基に、新卒教員が1年目で退職になってしまう理由とどうすれば安心して長く働ける学校を選べるかのコツをお伝えします。
~自己紹介~
私は教員一家に生まれ、両親・叔父叔母・祖父はみんな公立小中高の先生。そして自身は英会話講師 → 私立高校で教員 → 今は教育関連企業で会社員しています。
教育業界で10年。そのうち8年間は人事を担当。教育業界での採用や転職に長く関わってきました。その経験をもとに、記事を書いています。
この記事で分かること
- 新卒1年目の教員が退職してしまう理由
- 長く安心して働ける私立学校選びのコツ5選
- 充実した教員ライフの実現方法
教員になるための就活は不安も多いと思いますが、ぜひこの記事を読んでご自身の就職活動に活かしていただければ幸いです。
新卒教員が1年目で退職する理由
それでは、さっそく退職理由をご紹介していきます。
実際に人事として対応してきた新卒1年目の方の退職理由は、以下の通り。
- 仕事量や労働環境が合わない
- 学校の教育方針が合わない
- 生徒保護者からのプレッシャーに負けてしまう
- 職場の人間関係が悪すぎる
- 学校に将来性を感じない
1つずつ、具体的に解説していきますね。
仕事量や労働環境が合わない
新卒教員が入職後に直面することが多いのは、想像以上の業務量と業務時間です。
まだ入職して3週間とかなのに、授業準備、生徒対応、保護者対応、生徒イベントの準備や部活指導、事務作業など‥挙げればキリがないほどの業務をイチ教員としてやらないといけない‥ということも珍しくありません。
業務量が多いとどうしても残業も多くなりますし、【自分が本当にやりたいこと】に時間が割けないということも出てきます。
例えば、授業が好きで教員になったのに、生徒対応など別の業務が忙しくて、授業準備に割ける時間がまったく取れない‥なんてことも。
仕事内容や仕事量、残業時間などがイメージと合わずに退職となる方は多いです。
教員の仕事は大変だと聞いてはいたけど、人に聞く話と実際にやってみると「想像以上に‥」ということが多いんだね。
学校の教育方針が合わない
私立学校では、各学校に教育理念があり、教育方針や校風が学校ごとに大きく異なります。
例えば
- 進学校として学業に力を入れている学校
- スポーツや芸術教育に力を入れている学校
- 英語や留学などの国際関係に力を入れている学校
など、それぞれの学校で特色ある教育を実施しています。
学校の教育理念や教育方針は、教員の仕事内容に大きく関わってきますので、進学校であれば授業時間も多く、またレベルの高い授業を求められますし、英語や留学に力を入れている学校であれば、語学や留学のサポートなどが業務に入ってきます。
学校の教育理念が自分の教育観と合わない、ということになると、本当に自分のやりたい教育ができずに違和感を感じ続けてストレスになってしまうこともあります。
本当は「学歴なんて関係ない、生徒の個性を活かして活躍してほしい」と思っているのに「一人でも多く東大合格者を輩出しよう!」みたいな雰囲気では、働いている自分がしんどくなりますよね。
周りの先生も学校の教育理念に共感している方が多いので、なかなか相談に乗ってもらうこともできず一人で悩んでしまい、退職につながるケースも多いです。
100%自分のやりたい教育ができる環境はないと理解はしていても、方向性がまったく異なるとそれは続けられないな‥
>公立学校と私立学校の違いについては、コチラの記事も参考にしてください▼
生徒保護者からのプレッシャーに負けてしまう
学校教員は、勉強を教えるだけでなく、生徒ひとり一人の精神的なサポートも求められる場面があります。
- 学校での人間関係の悩み
- 病気で学校に来れず、授業内容についていけないといった悩み
- 生徒と保護者があまりにも不仲だという悩み(保護者からの)
などなど。
「進路先どうしよう」とか「部活でもっと成果を出したいんだけど、どうしよう」といった前向きな悩みならまだしも、ネガティブな悩みだと、イチ個人としても引っ張られてしまいますよね。
まだまだ経験の浅い新卒1年目では、どうやって声を掛けたらいいか分からなかったり、保護者が望む期待を満たす対応ができないといったこともあり「自分にはできない‥」と悩んでしまう先生も。
新卒のサポート体制が不十分な学校だったり、教育係がついていない学校だったりすると、新卒教員1人で生徒と保護者からの期待やプレッシャーを抱えることになってしまい、1年目での退職になってしまう場合もあります。
生徒と関わりたくて教員になったのに、自分じゃ手に追えない‥と思うとモチベーションも下がってしまいそう。
職場の人間関係が悪すぎる
新卒1年目は、周りの先輩教員に気を遣ったり、顔色をうかがって仕事をしないといけない場面が多くあります。
- いつも意地悪をしてくる教員がいる
- 悪口や陰口を言うのが普通になっている
- ボス的な教員がいて、その人の機嫌で物事が決まっていく
など、こんな職場では働きたくないですよね。
残念ながら、教員だけでなく、どの職場でも人間関係の問題は少なからずあるのが普通ですが、新卒教員で、しかもこの職場でずっと働いてくということを考えると‥辞めたくなる気持ちも分かります。
公立学校は定期的に異動があるので、合わない教員が異動をするか、自分が異動すれば解決しますが、とくに私立学校は人の入れ替わりがあまりないので、人間関係は重要ポイントです。
先生って言っても、いい人ばかりじゃないんだ‥
学校に将来性を感じない
学校に将来性を感じないという場合も「ここで長く働いていていいのかな?」と不安になり退職になることがあります。
- 学校が時代のニーズに答えようとしていない(ICTや留学、探求活動などを取り入れようとしない)
- DXやペーパレス化がまったく進んでいない(いまだにアナログすぎる方法で仕事している)
- 経営状況などが悪く、無理やりな学校運営をしている(赤字が続いているなど)
経営陣や学校としてやろうとしているけど、知見がなくてできなくて困っている、ということであればまだ救いはありますが、そもそも対応する姿勢を見せないというのは、学校として発展が望めません。
私立学校の教員は、それぞれの学校に雇用されるため、将来性のある学校で働くことは、教員として長く働けるかどうかの重要なポイントになります。
学校としての将来性がなければ、教員としてのスキルアップやキャリアアップできないということになりますので、その学校で働き続ける意味もなくなってしまいます。
いくら歴史のある学校だとしても、世の中の変化や生徒保護者のニーズに答えようとしない学校では、今後の発展が見込めないですよね。
新卒1年目の退職・転職もアリ
今までさまざまな方とやり取りをしてきましたが、人事としても「新卒1年目の退職・転職は全然アリ」だと思います。教員に長く続けてもらえる環境を作るのは、学校の責任だと思うからです。
ここまで、新卒1年目の教員の退職理由を見てきました。
いろいろな理由がありますが、自分が慣れていくことやスキルアップで解決できそうな問題もあれば、自分がいくら努力しても変えられない環境が理由の場合もあります。
自分の努力で変えられないことが理由でストレスを抱えてしまったり、自分を犠牲にしてしまうのであれば、さっさと環境を変えましょう。
誰のためにもなりません。
もちろん教員としての責任は持たないといけませんので、クラス担任を持っているのであれば、生徒保護者に迷惑のかからない年度末に退職するといった配慮は必要かもしれませんが、学校のために必要以上にガマンする必要はありません。
自分自身を過度に犠牲にすることなく、自分のキャリアアップを考えて「第二新卒」として次の学校を探すのも選択肢の1つです。
私立学校選びで失敗しないコツ5選
1年目の退職理由は分かったけど、じゃぁ安心して長く働ける学校を見つけるにはどうしたらいいの?誰も1年目でやめることは考えてないよ‥。
ここからは【私立学校選びで失敗しないコツ】をお伝えしていきます。
先に結論から、以下の5つを意識することで、より長く安心して働ける学校を見つけることができますよ!
- 学校の教育理念や教育方針を必ず確認する
- 仕事量とサポート体制を確認する
- 教員としてのキャリアパスと成長機会を考える
- 学校関係者と関わるときに、違和感がないかを確認する
- 良い面も悪い面も、どちらもイメージして検討する
1つずつ、具体的に見ていきましょう。
学校の教育理念や教育方針を必ず確認する
繰り返しになりますが、私立学校にはそれぞれの学校に教育理念や教育方針があり、それに基づいて生徒への教育提供を行っています。
教員としての仕事内容も、その教育理念に沿ったものになります。
自分が教員としてやりたい教育や自分の教育観が、その学校の教育理念に合っているか、共感できる部分があるかは必ず確認しましょう。
また言葉だけでのやり取りでは、採用担当と学生が別のことをイメージしながら話してしまうこともあるので、実際に学校見学や説明会などで現場を見せてもらうことも大切です。
自分の教育理念と100%一致する学校はなかなか見つからないかもしれませんが(勤務地など他の条件もありますし)、ある程度共感できる、この教育理念の下であれば自分も前向きに頑張れそうと思う学校を選びましょう。
あまり細かいことを質問して、採用担当に悪いイメージを持たれたらどうしよう‥と不安になる方もいらっしゃいますが、全く気にしなくて大丈夫ですよ!学校側も正しく情報を伝えることが大切だと理解していますので、納得できるまで質問しましょう。
仕事量とサポート体制を確認する
実際の学校の仕事量とサポート体制については、必ず確認しておきましょう。
私立学校では、各教員がメイン担当を持ちつつ、さまざまな細かい業務も行っていくことが多いため、新卒1年目の仕事量や残業がどれくらいあるのかを確認します。
具体的に「部活動の担当はどうなっていますか」などと聞くのもいいでしょう。
また、新卒教員が仕事を進めやすいようなサポート体制が学校にあるかどうかも大きなポイント。
人材の育成に力を入れている学校であれば
- メンター制度(新卒スタッフに先輩スタッフがついて、相談に乗ってくれる)
- 通年通した新卒対象の研修(学校理念理解、実務研修)
- サポートスタッフの配置
など、組織として取り組んでいるところもあります。
学校としてサポート体制があるところは、新卒教員が一人で不安や悩みを抱えることがなく、困ったときにも先輩を頼れる環境があるので安心です。
残業時間「数時間程度」と言われても、毎日1時間と週に1時間では、プライベートへの影響もかなり違います。1年上の先輩教員の実際の様子も参考にさせてもらいましょう。
教員としてのキャリアパスと成長機会を考える
その学校で働くことで、教員として成長していくための環境が整っているかも大切なポイントです。
退職理由の1つに「学校としての将来性を感じない」というものがありましたが、教員の成長=学校の成長(発展)です。
具体的には、以下のような特徴のある学校を選ぶのがオススメ。
- 教員対象の研修制度が整っている
→例えば2~3年目、中堅、管理職などの各世代向けの研修や、生徒対応や保護者対応、コミュニケーションに特化した研修など、学校によっては多くの研修が行われています。教員としてスキルアップすることが可能で、教員としてできることが増えていく実感が持てます。 - 将来的に学校運営に関わる仕事も担当できる
→教員としてのキャリアップだけでなく、例えば人事や学校広報、経理などの運営に関わる仕事のポジションがある学校もあります。別の角度で学校教育に関わる経験をすることができ、また仮に教員以外の仕事に転職したいと思った時にもスキルとして活かすことができます。 - 新しいことを積極的に取り入れている
→世の中の流れや生徒保護者のニーズをきちんと把握し、ICT教育ツールやIT端末を導入していたり、教員の働き方改革のための取り組みを積極的にしているなど、柔軟によりよい学校になる姿勢があると、そこで働く教員としても安心です。
学校関係者と関わるときに、違和感がないかを確認する
人事や先輩教員に質問したり、問い合わせをしたときに、言葉を濁されたり、ほしい情報を隠されたように思うことがあれば、その学校は要注意です。
また、面接官のふるまいや態度も参考にしましょう。
横柄な態度だったり、上から目線がすごいといった場合は、学校の中の雰囲気もそれが普通である可能性が大きいです。
就活の段階で少しでも違和感を感じたり、これってどうなの?と感じるようなことがあれば、入職後にも同じ感情を抱えることが絶対にありますので、そういった学校は避けましょう。
今はどの学校も教員不足ですので、良い教員に選んでもらえるように、職場環境を改善したり、より丁寧に対応したりと必死になっています。そんな中、違和感を感じるような学校は教員に選ばれないのは当たり前かなと思います。
良い面も悪い面も、どちらもイメージして検討する
就職活動で学校情報を集めていく中で「こんな学校あるんだ!」「ここで働きたい!」と思う魅力的な学校が見つかったとします。
そのまま勢いで採用面接に応募して‥となる前に【この学校で起こりそうな、ネガティブなことは何かないか】を想像してみましょう。
実は人間には、自分にとって魅力的な情報だけを集めて、ネガティブな情報を無視しがちな傾向があるのです(確証バイアス)。
「確証バイアス」とは、認知バイアスの一種で、自分にとって都合のいい情報ばかりを無意識的に集めてしまい、反証する情報を無視したり集めようとしなかったりする傾向のことをいいます。最初に思い込みがあると、多様な情報があっても、最初の考えを支持するような情報ばかりが目に付いてしまうのが確証バイアス。ビジネス、SNS、医療、政治、科学、雇用など、実生活のさまざまなシーンで散見されます。
確証バイアス|日本の人事部
良い面ばかりに気を取られて、ポジティブな情報しか耳に入ってこないことも多いですが、そういうときこそネガティブなこともイメージすることで「こんなはずじゃなかった‥」を防ぐことができます。
魅力的だなと感じるところはいったんそのまま置いておいて、上記で紹介してきたポイントについて改めて確認しましょう。
- 学校の教育理念は自分の考えと合っているか
- 仕事量、業務量は大丈夫そうか、サポート体制はあるか
- 教員としての成長は見込めるか
- 違和感を感じる人はいないか
これらのポイントについて、わざとネガティブな目線で情報収集をしてみて、悪いことが起きたら‥という想定をしておきましょう。
社会人として働いていくことは良いことばかりではなく、必ずイヤなこと・ツライことも出てきます。あらかじめネガティブな状況を想像しておけると、実際にその状況になったときにも、へこみすぎず前向きに対応することができますよ!
>後悔しない学校選びのポイントについては、コチラの記事も参考にしてください▼
まとめ
今回は「新卒の退職理由から学ぶ 私立学校選びで失敗しないコツ」をご紹介してきました。
新卒教員として、より長く安心して働ける学校を選ぶためには、以下の5つを意識してみてください。
- 学校の教育理念や教育方針を必ず確認する
- 仕事量とサポート体制を確認する
- 教員としてのキャリアパスと成長機会を考える
- 学校関係者と関わるときに、違和感がないかを確認する
- 良い面も悪い面も、どちらもイメージして検討する
就職活動中は、当たり前ですが、まだ働くこと・教員になることのイメージが持てないので「本当に大丈夫かな」と心配に思うことの方が多いと思います。
しっかりと学校情報を集めることと、自分がその環境にいることをイメージしてみましょう。
教員は大変な仕事ではありますが、教員にしかできないこともあります。
より長くより安心して働ける学校を見つけることが、充実した教員ライフを実現する土台の1つになります。
みなさんの就職活動の参考になれば幸いです!
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